夜明けの山々を映す静かな湖面

Macでセミリアルを速く:画像生成モデル9つを比較

セミリアルの絵を、手元のMacでなるべく速く描く方法を探しました。セミリアルは、写真とアニメの間くらいの絵柄のことです。候補になった画像生成モデル9つで、同じキャラクター(和装の女性)の一日を、起床から就寝までの12場面で描き比べました。

先に結論を書きます。

  • 1枚にかかる時間は、速いモデルで約6秒、遅いモデルで約17秒でした。手順を減らした「Turbo」と呼ばれるモデルが速く、Macでも十分に使えます
  • モデルごとに、構図の癖がはっきり分かれました。寄りで描くもの、引きで人物を真ん中に置くもの、場面に合わせて変えるものがあります
  • あるモデルでは、12枚すべてがカメラ目線になりました。原因と直し方も書きます

自分のことですが、写真のようにリアルな絵より、アニメ寄りの柔らかさが残るセミリアルの絵が好きです。ただ、手元にあるのはMacです。画像生成はMacに向かない、とよく言われます。それでも速く描ける組み合わせはないか、というのが今回の出発点です。

全体像:Macで速く描くには

Macが画像生成に向かないと言われる理由

画像生成の道具の多くは、NVIDIAのGPU(画像を描く計算を受け持つ部品)を前提に作られています。速くするための仕組みも、多くはNVIDIA向けです。たとえば、計算を速くするxformersやTensorRTは、Macでは使えません。

私の環境でも試してみました。4枚をまとめて頼むと、1枚あたり8.1秒だったものが10.0秒まで延びました。まとめて頼んでも速くならず、かえって遅くなったのです。Macでは、1枚ずつ続けて描くのが一番速い、ということになります。

作戦:少ない手順で描けるモデルを選ぶ

画像生成のモデルは、ノイズだらけの画像から少しずつ絵を描き起こします。この描き起こす回数を「ステップ」と呼び、少ないほど速く描けます。

ふつうのモデルは、きれいに描くのに20〜30ステップほど要ります。一方で、少ないステップでも描けるように作り直したモデルがあり、名前に「Turbo」などが付いています。Macで速くするには、こうしたモデルを選ぶのが近道です。

私の環境

  • Mac:Apple M5 Max(GPU 40コア)・メモリ128GB
  • 道具:ComfyUI 0.39.2(画像生成の操作を、部品をつないで組み立てる無料の道具)
  • 費用:0円(すべて手元で動かしました)

比べ方

同じキャラクターで、一日の12場面を描く

キャラクターは1人に決めました。20代半ばの女性で、長い黒髪を低い位置でまとめ、赤いかんざしを挿しています。服は、桜柄の薄桃色の着物と、濃い赤の帯です。夜の3場面だけ、紺の浴衣に着替えます。

番号 場面 番号 場面
01 起床(布団で伸びをする) 07 縁側でひと休み(おにぎりを食べる)
02 身支度(鏡の前で髪を整える) 08 生け花
03 朝食 09 神社へ散歩(赤い和傘をさす)
04 庭の水やり 10 夕食の支度
05 買い物(市場で) 11 夜の読書(行灯のそばで)
06 茶道(抹茶を点てる) 12 就寝(行灯を消す)

どのモデルにも、同じ「シード」を使いました。シードは、絵の出発点になるノイズを決める番号です。同じシードなら、同じ出発点から描き始めます。各場面1枚ずつなので、モデルの得意・不得意の傾向として見てください。

比べた9つのモデル

9つのモデルは、大きく3つの系統に分かれます。

系統 モデル 指示の仕方 ステップ
Anima Anima(turbo) タグ(単語を並べる) 8
Z-Image Z-Image Turbo 文章 8
SDXL系 CyberIllustrious Semi-Real/CyberIllustrious Anime/KFT Requiem Fur a Dream/Semi-Real (Illustrious) MM/DarkMix Mimosa/iLustMix タグ 24
SDXL系 AAM XL HalfTurbo タグ 8

AnimaとSDXL系は、「1girl, kimono」のように単語(タグ)を並べて指示します。Z-Imageは、「着物の女性が朝食を食べている」のように文章で指示します。

SDXL系のうち6つは、Illustrious XLというアニメ向けのモデルを元に、作者たちがそれぞれ手を加えたり、混ぜ合わせたりしたものです。この記事では「Illustrious系」と呼びます。AAM XL HalfTurboは、SDXL系のアニメ向けのモデルを、少ないステップで描けるようにしたものです。

描いた絵の使い道も確かめました。9つとも、描いた絵の商用利用は認められています(各配布ページの表示で確認。2026年10月11日時点)。Animaは、モデル自体の利用は非商用に限られますが、描いた絵は商用に使ってよいと、作者が明記しています。

結果:9つのモデルの一日

12場面を、9つのモデルで描いた一覧です。

9つのモデルで描いた、01起床から06茶道までの6場面の一覧。行がモデル、列が場面。Animaは顔に寄った構図、Z-Image Turboは写真に近い絵柄、Illustrious系の6つは似た構図、AAM XL HalfTurboは着物が赤い
図1:01〜06(朝〜昼)。行がモデル、列が場面(図を押すと拡大します)
9つのモデルで描いた、07縁側でひと休みから12就寝までの6場面の一覧。KFT RequiemとSemi-Real MMの就寝の場面は除外と書かれている
図2:07〜12(昼〜夜)(図を押すと拡大します)

就寝の場面のうち2枚は、描いたあとの自動の確かめで外しました。手元のAIに「性的な絵か」を聞く仕組みで、判定の理由は「大人の女性が浴衣を着てポーズをとっているため」でした。判定が慎重すぎた可能性もありますが、念のため載せていません。

生成時間

1枚にかかった時間です。最初の1枚は、モデルを読み込む時間を含むので分けています。

モデル 2枚目以降(中央値) 最初の1枚 12枚の合計
AAM XL HalfTurbo 6.1秒 9.2秒 76秒
Anima(turbo) 9.1秒 11.7秒 111秒
Z-Image Turbo 14.2秒 26.9秒 181秒
CyberIllustrious Semi-Real 15.7秒 18.3秒 189秒
CyberIllustrious Anime 16.2秒 18.4秒 196秒
KFT Requiem Fur a Dream 16.3秒 18.8秒 198秒
Semi-Real (Illustrious) MM 16.7秒 19.8秒 202秒
DarkMix Mimosa 16.8秒 19.8秒 204秒
iLustMix 16.8秒 19.9秒 204秒

※2枚目以降の中央値は、各モデル11枚から出しました。大きさは横長1216×832、縦長896×1152です。

8ステップのモデル(AAM XL HalfTurbo・Anima・Z-Image Turbo)は、6〜14秒で描けました。24ステップのIllustrious系は、16秒前後です。別の試しでは、Illustrious系にSDXL-Lightning(8ステップで描けるようにする追加の部品)を組み合わせると、1枚約6秒になりました。

系統ごとの印象

  • Animaは、12場面とも同じ人に見え、着物の柄もそろっています。顔に寄った構図が多めです
  • Z-Image Turboは、写真に近いセミリアルです。構図が場面ごとに変わり、食べる・読むといった動作も自然です
  • Illustrious系の6つは、引きの構図で人物を真ん中に置き、背景を細かく描きます。動作は描けていますが、記念写真のように正面を向く絵が多めです
  • AAM XL HalfTurboは一番速く、光の当て方が劇的です。ただ、薄桃色と指示した着物が赤になりました

分かった3つのこと

1. Illustrious系の6つは、構図までほぼ同じになる

同じシードで描くと、Illustrious系の6つは、構図がほとんど同じになりました。

Illustrious系の6つのモデルで描いた、朝食と神社へ散歩の2場面。6つとも人物の位置、窓や鳥居の配置、傘の向きまでほぼ同じで、違うのは塗りと顔立ちだけ
図3:Illustrious系の6つ。上が朝食、下が神社へ散歩

人物の位置、窓や鳥居の並び、傘の向きまで、ほぼ同じです。違うのは、塗りの質感と顔立ちくらいでした。

同じモデルを元にした兄弟どうしなので、構図を決める部分はあまり変わっていないのだと考えられます。つまり、Illustrious系の中から選ぶときは、構図ではなく塗りと顔立ちで選べばよい、ということです。構図を変えたいときは、シードを変えます。

2. Animaは、全員がカメラ目線になる

Animaで描いた12枚を並べると、ほぼすべてがこちらを見ていました。朝食を食べながら、本を読みながらでも、目線はカメラです。

指示に「カメラ目線」と書いたわけではありません。原因は2つ重なっていたと考えています。

  • 1つ目は、目を強調する語です。私の指示には、絵柄を整えるために「瞳の細かい描き込み」「美しく細かい目」といった語が入っています。目を見せる絵は、正面を向く絵に寄りやすくなります
  • 2つ目は、視線の向きを書いていなかったことです。Animaは、イラスト投稿サイト(Danbooru)の形式のタグなどで学んだモデルです。こうしたサイトでは、女性1人の絵に「looking at viewer(カメラ目線)」のタグがよく付きます。向きを書かないと、そちらに寄るのだと思います

そこで、場面ごとに視線を書き足しました。朝食なら「料理を見下ろす」、縁側なら「庭を見る・横顔」です。あわせて、打ち消し(ネガティブプロンプト:描いてほしくないものの指示)に「カメラ目線」を入れました。

Animaで描いた朝食・庭の水やり・茶道・生け花の4場面。上の段は直す前で、4枚ともカメラ目線。下の段は視線を書き足したあとで、料理や花、茶碗を見ている
図4:上が直す前、下が視線を書き足したあと

12枚とも、目線が手元や景色に向きました。動作も自然になり、あくびをする、ご飯を食べる、本を読むといった様子が伝わる絵になっています。1枚の時間は10.8秒で、直す前の9.1秒より少し長くなりました。測った時間帯が違うため、この差の原因はまだ確かめていません。

ひとつ注意があります。打ち消しの指示が効くのは、「CFG」が1より大きいときだけです。CFGは、指示にどれくらい強く従わせるかを決める値です。1.0にすると打ち消しの計算そのものが省かれるので、いくら書いても効きません。今回は1.3にしています。

3. 構図の癖は、モデルごとにはっきり分かれる

同じ場面でも、モデルによって構図の選び方が違いました。

朝食・庭の水やり・夜の読書の3場面を、Anima(視線つき)、Z-Image Turbo、DarkMix Mimosa、AAM XL HalfTurboで描いた比較。Animaは顔と手元に寄り、Z-Imageは写真のような構図、DarkMixは引きで人物を真ん中に置き、AAMは着物が赤い
図5:同じ場面の構図の違い(Illustrious系の代表としてDarkMix Mimosaを載せています)
  • Animaは、顔と手元に寄ります。人物の表情を見せたい絵に向きます
  • Z-Image Turboは、写真のように場面ごとに構図が変わります。文章で指示するので、「伸びをする」「髪を整える」といった動きが絵に出やすいと感じました
  • Illustrious系は、引きで人物を真ん中に置きます。背景まで細かく見せたい絵に向きます

描きたい絵に合わせて選ぶのがよいと思います。

プロンプトと設定(全文)

試したい方のために、使った指示をそのまま載せます。

キャラクター

昼の場面のタグは、次のとおりです。

adult japanese woman, 25 years old, long black hair in a neat low bun, red kanzashi hairpin, gentle brown eyes, pale pink kimono with cherry blossom pattern, dark red obi

夜の場面のタグです。

adult japanese woman, 25 years old, long black hair, loose low ponytail, gentle brown eyes, navy blue yukata, fully clothed

Z-Image Turbo(文章)は、同じ内容を英語の文にしました。

a graceful Japanese woman in her mid twenties with long black hair tied in a neat low bun with a red kanzashi hairpin and gentle brown eyes, wearing a pale pink kimono with a cherry blossom pattern and a dark red obi

場面のタグ

番号 タグ
01 sitting up on a futon, stretching arms, morning sunlight through shoji screens, tatami room
02 fixing her hair with a kanzashi, in front of a wooden vanity mirror, morning, tatami room
03 eating breakfast, low table, rice bowl, miso soup, grilled fish, chopsticks, kneeling, seiza
04 watering flowers with a watering can, japanese garden, hydrangeas, stone lantern, morning
05 shopping at a traditional market street, holding a bamboo basket, vegetables stall, smiling
06 tea ceremony, whisking matcha with a chasen, tea bowl, tatami room, kneeling, seiza
07 sitting on an engawa veranda, eating onigiri, cup of tea, garden view, afternoon
08 ikebana, arranging flowers in a vase, focused expression, tatami room, afternoon light
09 walking at a shrine, holding a red wagasa umbrella, torii gate, autumn leaves, evening
10 cooking in a traditional japanese kitchen, stirring a pot, tasuki sleeves tied, evening light
11 reading a book, beside an andon paper lantern, night, tatami room, warm light
12 kneeling beside a futon, turning off an andon paper lantern, night, moonlight through shoji

SDXL系(Illustrious系・AAM XL HalfTurbo)

指示は、次の形で組み立てました。

masterpiece, best quality, amazing quality, very aesthetic, absurdres, semi-realistic, detailed eyes, detailed face, 1girl, solo, <キャラクター>, <場面のタグ>, depth of field, soft lighting, cinematic lighting

打ち消しは、次のとおりです。

lowres, worst quality, low quality, bad anatomy, bad hands, extra fingers, text, watermark, signature, 3d, cgi, nsfw, nude, naked, cleavage, underwear, lingerie, bare shoulders, exposed skin, revealing clothes, child, loli, young girl, multiple girls, 2girls

設定は、Illustrious系が24ステップ・CFG 5.0・サンプラー euler_ancestralです。AAM XL HalfTurboは作者の推奨どおり8ステップ・CFG 4.0・euler_ancestralです。

Anima

視線つきの指示は、次の形です。

1girl, solo, <キャラクター>, <場面のタグ>, <視線>, detailed iris texture and catchlight, individual hair strands, glossy hair with realistic specular highlights, realistic cloth folds, semi realistic illustration, realistic skin texture with fine pores, subsurface scattering, soft skin shading, volumetric lighting, photographic lighting, shallow depth of field, detailed background, highly detailed, sharp focus, 8k, masterpiece, (beautiful detailed eyes:1.1), (anime eyes:0.6), delicate facial features

打ち消しには、塗りが平たくなるのを防ぐ語と安全の語に加えて、次を足しました。

(looking at viewer:1.3), eye contact, facing viewer

場面ごとに足した視線は、次のとおりです。

番号 視線
01 eyes half closed, yawning, looking away
02 looking at mirror, from side
03 looking down at food
04 looking down at flowers, from side
05 looking at vegetables, from side
06 looking down at tea bowl
07 looking at garden, from side, profile
08 looking at flowers, from side
09 looking up at torii, looking away
10 looking down at pot, from side
11 looking down at book
12 looking at lantern, from side

設定は、8ステップ・CFG 1.3・サンプラー er_sde・スケジューラー simpleです。

Z-Image Turbo

指示は、画風の文のあとにキャラクターと場面の文を続けました。

A masterpiece semi-realistic digital painting that sits between realism and anime, leaning slightly toward anime: beautiful faces with slightly large anime-inspired eyes, detailed iris texture and catchlight, realistic skin texture with soft painterly shading and subsurface scattering, individual hair strands with glossy specular highlights, realistic cloth folds and fabric texture, volumetric lighting, photographic lighting, shallow depth of field, highly detailed, sharp focus. <キャラクターの文> <場面の文>.

設定は、8ステップ・CFG 1.0・サンプラー res_multistepです。CFGが1.0なので、打ち消しは使っていません。

まとめ:何を優先するかで選ぶ

9つのモデルを同じキャラクターで比べて、Macでもセミリアルの絵を1枚6〜17秒で描けることが分かりました。選び方をまとめます。

優先したいこと 合うモデル 1枚
とにかく速く AAM XL HalfTurbo(色の指示が外れることがある) 約6秒
人物の表情と雰囲気 Anima(視線を書く) 約11秒
写真に近い自然さ・動きのある構図 Z-Image Turbo 約14秒
背景まで細かい引きの絵 Illustrious系(中では塗りと顔立ちで選ぶ) 約16秒

私は、Animaの人物画が一番好きです。ただ、構図はZ-Imageのほうが場面に合わせて自然に変わります。これは人それぞれなので、ひとつの参考として見ていただければうれしいです。

次回は、構図が得意なモデルと塗りが得意なモデルを組み合わせて、両方の良さを取れないか試してみます。